動物由来感染症
『動物(ペット)から人に感染する病気がある』 って知っていますか?~動物由来感染症~
「動物由来感染症」とは、動物から人に感染する病気の総称です。人も動物も重症になるもの、動物は無症状でも人では重症になるもの等、病原体によって様々なものがあります。
動物由来感染症って、どんなものがあるの?
動物由来感染症は、動物に『触れる』だけでも感染することがあります。
特に野生動物の場合はどのような病原体をもっているのか不明なことが多く 、感染すると重症になる病原体を持っている可能性があります。
日本は地理的要因や家畜衛生対策が徹底されている等の理由により、世界から見れば動物性由来感染症が比較的少ないのですが、世界では多くの動物性由来感染症が発生しています。
海外では、野生動物や飼い主が分からない動物にむやみに触れないようにしましょう。
主な動物由来感染症
動物の種類 | 感染症名 | 感染原因 | 病気の症状 | 予防方法 | 実際にあったこんな話 | |
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犬・キツネなど |
狂犬病 | 感染した動物に咬まれるなどで感染。 | 潜伏期間 | 1~3か月 | 飼い犬の年1回の狂犬病の予防接種。狂犬病流行地域を旅行する場合には、渡航前にワクチンを接種する。 |
【日本】海外で犬にかまれて感染した人が、日本に帰国して発症後に死亡しています。 【海外】コウモリから感染して発症後に死亡しています。 |
症状 | カゼに似た症状から、咬まれた部位のかゆみなどの症状。また、不安感や興奮、麻痺、錯乱などの神経症状が現れ、数日後に呼吸麻痺で100%死亡する。 | |||||
エキノコックス症 | キタキツネが主な感染源で、糞中に排出されたエキノコックスの虫卵が体内に入ることで感染。 | 潜伏期間 | 数年~数十年 | キタキツネなどとの接触をできるだけ避け、外出後はよく手を洗う。山菜や野菜、果物などをよく洗ってから食べる。 |
【日本】キタキツネの糞中の卵に感染して、20年後に発症しています。 |
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症状 | 初期には、上腹部の不快感、膨満感の症状。進行すると肝機能障害を起こす。 | |||||
パスツレラ症 | 犬や猫に咬まれたり、ひっかかれたりするなどで感染。 | 潜伏期間 |
30分~数時間 |
犬や猫に触れた後は、よく手を洗い、うがいをする。口移しで食べ物を与えたり、一緒に寝たりしない。咬まれたりひっかかれたりしないように注意する。 |
【日本】犬、猫がふつうに持っている病原体で、過度の密接な接触によって感染しています。 |
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猫など |
症状 | 軽いカゼ症状から、重篤な肺炎まで様々である。傷などを受けてから、30分~数時間後に傷口の激しい痛みや発赤、腫脹を伴った化膿性炎症が見られることがある。 | ||||
トキソプラズマ症 | 加熱不十分な食肉を食べたり、感染した猫との接触や砂場や土などから感染。 | 潜伏期間 | 数日~1週間程度 | 肉は十分に加熱調理を行う。猫の糞が付く恐れのある場所(ガーデニングや畑仕事など)では手袋を着用し、よく手を洗う。果物や野菜を生で食べるときはよく洗う。 |
【日本】十分に加熱調理していない肉を食べて感染しています。 【海外】食肉習慣や衛生状況などが原因で感染しています。 |
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症状 |
正常な免疫能を持つ人は、感染してもほとんど症状も出ませんが、免疫が低下している人には、肺炎や心筋炎などの重篤な症状がでたり、妊婦が感染した場合、生まれてくる赤ちゃんに影響が出る場合がある。 |
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Q熱 | 感染した動物(特に猫)に接触したり、それによって汚染されたほこりなどを吸い込むことで感染。 | 潜伏期間 | 2~4週間 | 流行のある地域では、動物に触るのを控え、飼育している場所にも近づかない。殺菌していない乳製品の摂取を避ける。 | 【日本】犬、猫がふつうに持っている病原体で、過度の密接な接触によって感染しています。 | |
症状 | 感染者の50%は発症せず、軽度の呼吸器症状で治ることも多い。急性型の場合は、潜伏期の後、高熱や頭痛、悪寒、全身倦怠感などのインフルエンザに似た症状が現れる。中には、肺炎や肝炎を起こすこともある。 | |||||
ネズミなど |
ペスト | 病原体を保有したノミに刺されることによるが、感染した動物(ネズミなど)の体液に触れたり、菌を吸い込むことでも感染。 | 潜伏期間 | 2~6日 | 発生地では、野生のげっ歯類(プレーリードッグなど)などの感染動物との接触に注意する。 | 【海外】野生のリス、プレーリードッグが感染源となっており、死亡した人もいます。 |
症状 | リンパ節の腫れ、皮膚の小出血斑、高熱などの症状(腺ペスト)。菌が全身に回ると敗血症を起こし、ショックなど重い症状になる。また、菌が肺に回ると肺ペストを起こし、呼吸困難となり2、3日で死亡する。 | |||||
レプトスピラ症 | 犬やネズミなどの保菌動物の尿に触れたり、尿に汚染された水や土などから皮膚や口を介して感染。 | 潜伏期間 | 5~14日 | ネズミなどの保菌動物の駆除や対策をする。衛生環境を改善する。 | 【日本】感染したネズミの尿で汚染された池、川で水遊びをして感染し、発熱しています。 | |
症状 | 発熱、頭痛、筋肉痛、結膜充血などの症状。重症の場合は、黄疸、出血、腎機能障害などを引き起こす。 | |||||
鳥 |
オウム病 | インコ、オウム、ハトなどの糞に含まれる菌を吸い込んだり、口移しでエサを与えることによっても感染。 | 潜伏期間 | 1~2週間 | 鳥かごなどは、羽や糞が残らないように、常に清潔にする。世話をした後は、手洗い、うがいをする。口移しでエサを与えたりしない。 | 【日本】展示施設の従業員や来場者の間で集団発生しました。 |
症状 | 突然の発熱、痰を伴う咳、食欲不振、筋肉痛などのインフルエンザに似た症状。重症の場合は、呼吸困難、意識障害などとなり、診断が遅れると死亡することもある。 | |||||
ウサギなど |
野兎病 | 感染した動物(特に野ウサギ)との接触や、マダニやアブなどに刺されることで感染。 | 潜伏期間 | 3~7日 | 野生動物との接触を避け、マダニなどに刺されないよう、長袖、長ズボン、虫除け剤などを活用する。 | 【海外】汚染地帯で、野ウサギやマダニから感染して発症しています。 |
症状 | 突然の発熱、頭痛、筋肉痛、関節痛などのカゼに似た症状。その後は、リンパ節の腫れ、膿瘍化、潰瘍などを引き起こす。 | |||||
カメなど |
サルモネラ症 | 主にカメなどの爬虫類との接触や、菌を口から摂取することにより感染。(カメでは、50~90%が菌を保有している。) | 潜伏期間 | 8~48時間 | 動物の飼育環境を清潔に保ち、世話をした後は、十分に手を洗う。飼育水はこまめに交換し、排水により周囲が汚染されないように注意する。 |
【日本】ペットのミドリガメやイグアナ等のは虫類から子どもが感染し、重症となっています。 【海外】は虫類のペットから感染して、乳児が死亡しています。 |
症状 | おう吐、腹痛、下痢などの胃腸炎症状。重症の場合は、菌血症・敗血症・髄膜炎などとなり、死亡することもある。 |
上表以外にも、日本紅斑熱(マダニに咬まれて発症)、腸管出血性大腸菌感染症(触れ合い動物施設で集団感染)、デング熱(蚊に刺されて感染)など多くの動物由来感染症があります。
どうすれば予防できるの?~日常生活で注意すること~
過剰な触れ合いは控えましょう!
細菌やウイルスが動物の口の中や爪にいることがあるので、口移しでエサを与えたり、スプーンや箸の共用は止めましょう。動物を布団に入れて一緒に寝ることも注意が必要です。
動物に触ったら、必ず手を洗いましょう!
知らないうちに動物の唾液や粘液に触れたり、傷口などに触ってしまうこともあります。
動物に触れた後は、必ず手を洗いましょう。
砂場や公園で遊んだ後は、必ず手を洗いましょう!
家庭の庭や公園の砂場などは、動物が排泄をしていることがあります。特に子どもの砂遊びやガーデニングなどで草むしりや土いじりをした後には、十分に手を洗いましょう。
動物の身の回りは清潔にしましょう!
飼っている動物はブラッシング、爪きりなどを行い、こまめに手入れしましょう。
また、動物の小屋や鳥カゴなどの糞尿はすぐに処理をして、清潔にしておきましょう。
室内で鳥などを飼育するときは、換気することも大切です。
動物の健康管理をしましょう!
動物は無症状でも病原体を持っていることがあるため、知らないうちに飼い主が感染してしまうことがあります。かかりつけの動物病院を持ち、定期検診をうけさせるなど病気の早期発見に努めましょう。
飼い方や病気の予防、ワクチン接種などの相談もできると安心です。
また、犬の飼い主は、「狂犬病予防法」により犬の登録と狂犬病予防注射の接種が義務付けられています。 詳しくは「畜犬登録 」のページをご覧ください。
野生動物の家庭での飼育はさけましょう!
野生動物はどのような病原体を持っているのか分かりません。
また、動物資源保護の観点からも、野生動物を飼育するのはやめましょう。
野山に出かけるときは、肌の露出を少なくしましょう!
野生動物が出没する環境にある場所にはマダニが多く生息しています。マダニは、野兎病、日本紅斑熱、Q熱、重症熱性血小板減少症候群など、多くの感染症を媒介するため、咬まれると感染することがあります。
野山などに出かけるときは、マダニに咬まれないよう肌の露出を少なくする服装を心がけましょう。
もし、体に不調を感じたら、早めに医師の診察を受けましょう!
動物由来感染症に感染しても、カゼやありふれた皮膚病などに似た症状が多く、病気の発見が遅れがちです。特に、子どもや高齢者は、発病すると重症化しやすいので注意が必要です。 医療機関を受診する際は、ペットの飼育状態についても医師に話しましょう。
動物由来感染症について詳しくはこちら(関連サイト)
- 厚生労働省HP「動物由来感染症を知っていますか」