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芸術を愛したエアバッグの考案者 小堀保三郎

小堀保三郎氏は上三川町出身の発明家です。自動車のエアバッグ開発者として知られています。1980年代に欧米で取り入れられて以降、急速に普及し、現在では自動車にとって当然の安全装備になりました。近年、その業績が高く評価され、日本自動車殿堂入りを果たしています。

プロフィール

  • 氏名:小堀 保三郎(こぼり やすざぶろう)
  • 職業:発明家、(株)G・I・C代表取締役社長
  • 生没年:明治32(1899)年8月25日生-昭和50(1975)年8月30日没
  • 出身地:栃木県河内郡明治村下多功(現:上三川町大字多功)
小堀保三郎肖像画
(写真提供:特定非営利活動法人日本自動車殿堂)

来歴

独創的な発明家

小堀保三郎氏は、明治32(1899)年に栃木県上三川町で生まれました。明治小学校を卒業後、奉公に出ました。小堀氏は、高等教育を受ける機会に恵まれず、終始独学で勉強に励みました。こうして得た様々な知見が、社会に貢献する後の発明へと繋がっていきました。
大正13(1924)年、大阪府の帝国通信社へ新聞記者として入社し、当時の財界有力者との交流を深めていきました。昭和12(1937)年、大阪府下尼崎に大阪工機製作所を創設し、小型クレーンの開発事業に励みました。
昭和37(1962)年、東京都品川区に(株)G・I・C(グッドアイディアセンターの略)を設立し、サンドイッチ自動製造機などを開発し、数多くの特許を取得しました。
昭和39(1964)年、エアバッグの開発に着手しました。自身の乗っている飛行機が風に煽られて倒れそうになった時、偶然折り畳みテーブルが開き、手をついて助かったことがきっかけでした。幾度もの実験を重ね、昭和47(1972)年に「拘束型エアバッグ安全装置」という名でアメリカやイギリスなど世界14か国で特許権を取得しました。
エアバッグ
(小堀氏が発明した当時のエアバッグの図)

郷土への想い

小堀氏の生家のある集落には多功不動尊と呼ばれる仏堂があります。中世の鎌倉街道沿線にあり、近隣の人々に篤く信仰されていました。かつては、ここを通るほとんどの旅人が立ち寄って礼拝し、「金明水」と呼ばれた湧き水で喉を潤しました。
昭和10年代、不動尊にかつての賑わいがなくなっていく中で、荒廃を嘆いた小堀氏は巨額の私財を投じて現在のように改修整備をしました。
昭和20年代、芸術にも精通していた小堀氏は、若かりし頃の画家・棟方志功氏とも交流があり、「栃木の農村は勉強をするのに静かで良いところだから」と実家の小堀家へ招きました。棟方氏は、小堀家の心温まる接待と農村の風景に愛着を感じ、当初より長く逗留して画業に専念しました。棟方氏は、小堀氏の郷土に対する想いに感銘を受け、不動尊に毎朝参拝し、境内の榎の古木を「歓喜木」と命名しました。
多功不動尊と歓喜木
(左:多功不動尊/右:棟方志功が名付けた歓喜木)

文化人として

小堀氏は、書道や陶芸など文化芸術への造詣も深く、短歌の歌集も残しています。特に、民芸に深い愛着を持っており、壮年期から晩年まで民芸会で幅広い交流を持っていました。先に述べた下積み時代の棟方氏の支援者・理解者でもありました。
また、日本古来の歌曲を愛し、帝国ホテルなど様々な場所で歌声を披露していた記録が残っています。
菊寿会
(菊寿会の恒例の披露(中央)/昭和34(1959)年帝国ホテル/写真提供:特定非営利活動法人日本自動車殿堂)

世界への貢献

当時の産業界の風潮もあり、エアバッグの実用化を見ることなく、小堀氏はこの世を去りました。1980年代に入り、アメリカなどでエアバッグの導入が始まり、90年代に急速に普及し、現在では車に標準装備されている安全装置となりました。平成18(2006)年、エアバッグの開発とその重要性を世界に広め、今日のエアバッグ普及の道を切り開いた先駆者としての功績が評価され、特定非営利活動法人日本自動車殿堂から殿堂者として顕彰されました。

経歴

小堀保三郎氏の主な活動
明治32(1899)年   栃木県河内郡上三川町明治村下多功に生まれる
45(1912)年 13歳 明治尋常小学校を卒業後、奉公へ出る
大正13(1924)年 25歳 帝国通信社(大阪府)へ入社
昭和9(1934)年 35歳 大阪電気鉄道(現:近畿日本鉄道(株))へ入学
12(1937)年 38歳 大阪工機製鉄所を創設
32(1957)年 58歳 社名を大同輸送機工業に改名
35(1960)年 61歳 社名を関西輸送機(石川島播磨重工業系列)に改名
37(1962)年 63歳 石川島播磨重工業(現:石川島運輸機械(株))に経営権を譲渡
(株)G・I・C(東京都)を創設
39(1964)年 65歳 エアバッグの開発に着手
47(1972)年 73歳 「拘束型エアバッグ安全装置」の特許権を取得
50(1975)年 76歳 逝去

掲載日 令和6年8月1日
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